名著?トンデモ本?今読むべき『風邪の効用』野口晴哉

風邪の効用 野口整体

風邪なんて引きたくない!

普通はそう考えると思いますが、野口整体の創始者・野口晴哉の著書『風邪の効用』を読めばそんな不安から一転、風邪が楽しみになるかも?

『風邪の効用』の内容を一言でまとめると、風邪は偏った疲労の調整になるから、その経過を乱さず全うすると自然の整体法になる、ということです。

一見トンデモ本ですが、騙されたと思って書いてあることを実践・観察すると、色々なことが腑に落ちて、実は常識がトンデモなんじゃないかと思えてくる不思議な本。

風邪の捉え方とその効用を通して、人智を超えた生命の自律的な働きを乱すことの愚かさを考えさせられます。

この記事では、20歳まで風邪のたびに薬漬けで育ち、体調を乱していた実感のある私が、風邪の基本的な考え方や上手な引き方など、覚えておきたい『風邪の効用』の内容を自分の解釈を交えて紹介しています。

*科学的な根拠のない健康情報ですが、科学的な情報とは異なり、ご自身で実践し確かめることができます。正しいかは分かりませんが、このような考え方もあるのだと知っていただければと思います。自分の健康に責任を持つ方にはぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。

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「風邪は偏り疲労の調整である」との主張は妥当か

風邪を引いたり、ウイルス等に感染して自然治癒すると「免疫がつく」というメリットはよく知られています。

では「風邪は偏り疲労の調整になる」ことを知っていますか?

整体の世界では当たり前のことですが、一般には知られていないので、簡単に説明していきます。

「疲れ」とは偏った疲労である

ある部分を偏って使うとその部分の緊張が抜けなくなります。

例えば目を使うと、目や首が緊張しますが、少し疲れたなと思って、遠くを見たり首を動かしたりすると緊張がゆるみます。ところがずっと目を使っていて、疲れたと思ってもそのまま使い続けると緊張が緩まず緊張しっぱなしになって「疲れが抜けない」状態になります。

目だけではなく、腕を使い続ける、食べすぎて胃腸を使い続ける、神経を使う、ストレスや飲みすぎて肝臓を、など人によっていつも使いすぎる部分は決まっています。

筋肉ー骨格ー内臓の緊張は連動していますから、例えば食べすぎると胃腸も疲れますが同時に消化器と連動した背骨が変動を起こし、筋肉も緊張するので、肩がこってどちらかの肩が上がったりして、左右に偏りが起こり、重心の左右差も大きくなります。(経験則でそういう連動が分かっています)

このようにある部分の緊張が緩まない状態、部分的に伸び縮みの幅が狭くなった状態を偏り疲労と呼んでいます。内臓の疲れから筋肉が硬くなることもあれば、腕の使いすぎなど、筋肉の疲労から内蔵が働きにくくなることもありますが、どちらにしろ連動した筋肉や背骨は触ると硬くなっています。

偏り疲労が起こると、他の部分は疲れていなくても全身の「疲れ」と感じ、休みたくなります。

そもそも「健康」とは?

「健康であること」を「病気にならないこと」と考えていませんか?

また、すぐに風邪を引くのを「体が弱い」と思っていませんか?

整体では、弾力のあること健康と考えています

筋肉の伸び縮みの幅がしっかりあって、偏り疲労が起こってもすぐに回復できるような敏感な状態、観察としては背骨を軽く押してみて、はね返るような弾力のある状態を健康と位置づけています。

逆に症状がなくても、偏り疲労が蓄積して戻らなくなっている状態、筋肉が硬くなって伸び縮みの幅がなく、背骨も硬くなっているのは鈍くて感じていないだけ、と言えるかもしれません。

だから少しの偏りでさっと調整して弾力を回復できる体が健康だし、若いと言えます。

寝相で調整する

偏り疲労が起こっても、本来なら寝れば緊張は抜けて、朝になるとさっぱりしているものです。

これは寝ている間に体が勝手に調整してくれているためです。

全身のゆるみとひきしまり=伸び縮みがスムーズな体が健康ですから、寝ている間に全身がゆるみ、目が覚める時には全身が引き締まってスッキリ起きられます。

熟睡に入る前に、疲れてゆるみにくい場所は寝相によって調整しています。

例えば頭をよく使って疲れているときは腕を上げて寝るなど。

子供が転々と寝相を変えて寝るのは、偏った疲労を次々抜くような体勢をとって、体をゆるめているわけです。

大人になると寝相が良くなっちゃうね

偏ると風邪をひく

寝ている間に調整できない偏りが蓄積し、体に弾力がなくなってくると風邪を引いて調整します。

風邪は脈絡なく引くのではなく、偏り疲労が蓄積して、フッとゆるんで回復に向かう時に引くらしいのです。

休暇に入ったり大きな仕事が終わった途端に熱を出したりしませんか?

風邪を経過すると偏りがよくなる

風邪を引いてしっかり経過を全うすると、鈍くなっていた体が弾力を回復し、偏り疲労も調整されます。

例えば食べ過ぎで左右の重心に偏りが大きかった人が、下痢をした後は重心の偏りが小さくなっていたり、腰や肩のこわばりが抜けていたりすることがあります。

前かがみの姿勢では息が大きく吸い辛いですよね?不安があると息が浅くなってきますが、そういう人が風邪を引くとゴホゴホ咳をしたりして、風邪が治る頃には、前屈姿勢がよくなっていることも。

不安になると胸が縮んで呼吸=息=気が小さくなります。逆に胸が縮むと不安になることも。コロナが怖くて引きこもってると、胸が縮んでより怖くなるって悪循環。外でしっかり息を吸って胸を張って大股で歩こう!

体が変われば感受性も変わるってこと?同じことを見聞きしても体の状態によって反応=浮かんでくる気持ちが違う?

「嘘でしょ!?」と思う方は観察してみればいい

風邪で体が整うなんて!と思う方は、今度風邪をひいたら、よく観察してみると実感できると思います。

観察方法1 感覚

疲れてだるい、しゃきっとしない、どこかが痛い、風邪を引く前はなんとなく調子が悪い。

働き詰めで何も感じない。

それが風邪をひくと、色んなところが痛んできたりして、ここがこわばっていたのか、と気付く。

熱が出て、汗が出ると筋肉がゆるむ。

風邪が抜けた後は気分爽快。すっきりして充実感がある。

観察方法2 見た目、性格

例えば汗が冷えると泌尿器に負担がかかり、体が捻れてきます。ねじれるとねじれ型(体癖参照)じゃない人でも意固地になったり負けず嫌いになって(腰が捻れることを喧嘩腰と言いますよね?)人の言うことを聞かなくなったり、意識していなくても、風邪をひく前には見た目や性格が偏ってくることも。(無意識なので本人は気付かない)

風邪を引くと「蛇が脱皮するように新鮮な体になる」と言われていますが、見た目も肌が透き通ってツヤがいいとか、姿勢がよくなるとか、溌剌とした雰囲気になります。

その人らしい性格の良さが戻って素直になります。

観察方法3 背骨の弾力

自分では分かりにくいかもしれませんが、元気な人は背骨を軽く押さえると、ちょっと沈んではね返るような弾力があります。

動きすぎる背骨は「過敏」、硬くなって動かないのを「鈍り」と言っていますが、風邪を引いた後はそういう異常も解消されて、粒が揃うというか、どの骨にも弾力が取り戻ります。

筋肉のコリなど、なかなか緩まなかったところも、風邪を引いた後はゆるんでいたり、マッサージなどする人にはすぐわかると思いますが、筋肉の質が素直になっているので明らかにほぐれやすいです。

筋肉の緊張が緩むので、骨格の歪みも改善されます。風邪を利用して整体すると普段治せないところも調整できることがあります。

観察方法4 体量配分(重心)

私は詳しくありませんが、体の重心を測る「体量配分計」というものがあって、主に体癖的な偏りの研究に使われていますが、定期的に測っていると、風邪を引く前には重心の偏りが大きくなり、その偏りが戻ろうとする時に風邪を引き、風邪が治るとバランスが改善するそうです。

このことからも「風邪は病気というよりも、風邪自体が治療行為」なのではないかと考えるようになったとか。

感覚としても、重心が安定しやすく、ずっしりと両足に乗っている感じが分かると思います。

観察方法5 慢性病が治る?

風邪を引くと慢性的な症状がよくなることがあります。例えばアレルギーや花粉症がなくなったとか、血圧が下がったとかいう話も聞きます。私も昔はアレルギーや湿疹、中耳炎や外耳炎をしょっちゅうやって病院通いがやめられませんでしたが、風邪を乱さずに経過するようになってなくなりました。

症状は体の偏り疲労から起こっていて、風邪が偏り疲労の調整になっているとすると、慢性病がなくなるのも不思議ではありませんね。

もっとこういう研究すべきだと思うんですが。薬が売れなくなるからやらないのかな?

風邪も引けない鈍い体

引くべき時にしか引けない

風邪の直接的な原因はウイルスなどの感染と言われていますが、同じウイルスにさらされていても引く人と引かない人がいます。

またかかっても人によって症状が違うし、すぐ治る人もいれば重症化する人も。

この違いは「免疫」で説明されることが多いですが、体を観察していると、風邪を引く時というのは、疲労がたまって偏った状態から、フッとゆるみ回復する時です。

だからずっとこわばったままでは風邪は引けません。

風邪を引かないのは、「体に合った生活をして疲労が偏っていないから引く必要がない」、または「風邪も引けないような鈍い体」かのどちらかだと言えます。

体が鈍くなると症状が重くなる?

ちょっとの偏りをすぐに感じて調整するのが敏感な体です。

ずっと風邪が続いたり、症状が重くなるのは偏り疲労を溜め込んだ体、なかなか弾力を回復できない体かもしれません。

それでも風邪が引けているうちは一応安心。風邪が安全弁になっているからです。

風邪を引けなくなると?

体をみていると、背中全体がカチカチにこわばって力が抜けなくなっている人がいます。

そういう人は体の力を抜こうとしても抜けません。「抜いてください」と言っているのに力が入ってしまう。一枚岩のようになっていて、どこに力が入っているのか、どこが痛いのかもよく分からない。

体が鈍くなってしまうと、病気も感じない、異常も感じない、風邪も引かないから本人は丈夫なつもりでいて、突然バタッとくる。ゆるんで風邪を引く機会がないからです。

大病を患うというのは突然ではなく、自覚しないうちに病気が重くなって、自覚した時は間に合わない、そういうのはその根本に鈍くなっている体がある、晴哉さんは言っています。

大病する前には風邪を全く引かなくなる期間があるとか。ほんとかな?

「風邪を治す」と「風邪が治る」の違い

風邪を治すとどうなるか

風邪を完全に経過しないで治してしまうと、普段の体の弱いところ、偏りが修正されないままになるから、風邪を繰り返すことになります。なんとか回復させようとするのですね。

風邪の治療に工夫し過ぎると、風邪を経過しても体量配分比の乱れは正されず、よりひどい偏りを示すこともあるそうです。

症状は体の偏っているところが声を上げている状態ですから、問題を解決しないままその声だけを抑える対症療法では、だんだんその声が大きくなったり別の問題が派生してくるのは当然のことのように思えます。

【体験談】風邪を繰り返すのはなぜか?

私は20歳まで薬を飲まずに風邪を経過したことがないと、プロフィールで書きましたが、本当に風邪ばかり引いていたのです。風邪を引くたび咳止めや、解熱剤、抗生物質(今では細菌感染のない普通のウイルス性の風邪には処方されないらしい。薬剤耐性菌が問題になっている。自分の常在菌も殺すので免疫にダメージを与える)など色んな薬を飲んでいたのに、全く治りませんでした。

ところが一念発起してきっぱり薬をやめたら、圧倒的に治りが早くなり、そんなに頻繁に引かなくなったのですが、この経験の理由が『風邪の効用』を読んで「経過を乱していたから繰り返す必要があったのだ」と腑に落ちました。

詳しくはこちらから。

免疫を弱らせてたんだから当たり前ですが。体の偏りも調べてみたかったなぁ。良かれと思ってやったことがどんな結果になるかは分かりません。生命を管理するにはまだ知恵が足りないのでは?驕れる者久しからず。

30年前に開業医だった祖父は当時の医学で常識の処置をしてくれたんですが、常識というのはコロコロ変わります。今は身内の風邪には薬を飲ませないお医者さんも多いみたいですが。。

風邪の予防は必要か

風邪の予防として、「鈍らせるもの」と「敏感にするもの」があると思います。

例えば冷水摩擦などをやると、風邪が引けなくなります。これは体が鈍くなるためです。

風邪は偏り疲労が限度までいって、フッと緩む時に引きます。体や心を硬張らせ鈍らせていると風邪は引けなくなるので、予防といえば予防になります。

逆に敏感にするものとして、活元運動があります。

活元運動をやっていると、一時的に風邪を引きやすくなることが多いようです。それは体が敏感になったから偏りをさっと修正するために風邪を引くのですが、何度か経過するごとに、風邪は軽く短くなっていくはずです。

一晩熱を出すとか、くしゃみを数回するとか、そんな簡単に風邪を経過できるようになれば予防の必要性があまりないですよね。

巷で行われている、いわゆる感染予防に関しては、引くべき時はさっさと風邪をひいてしまいたい、という立場からはあまりに厳重だと迷惑といえば迷惑ですし、警戒していては体をこわばらせることになるので風邪はひかないかもしれないけど、風邪(偏り)を溜め込むと、次に引いたときはその分重くなったり、違う病気になったりして厄介だろうにな、と思ってしまいます。

まぁ程度問題ですけどね。予防しすぎて健康じゃなくなったら本末転倒。。

大昔から病気にかかって、体を強くしたり、弾力のある状態を保ってきた(と整体的には考えられている)、感染症に罹るのが当たり前の環境に適応してきた私達の体は、その機会を奪われて無病になると、どうなるのでしょう?

確かに感染症により亡くなる方は減りましたが、体は鈍く、弱くなってきているのではないかと感じています。頭も硬い人が増えてるような。弱い人も弱いまま生きられるようになったのは良いことと言えば良いことかもしれませんが、何事も裏表がありますね。今まで頑張って働いていた免疫に仕事がなくなって、自分の体を攻撃するような病気も増えています。

晴哉先生は、天然痘がなくなったら結核が、結核がなくなったら癌が増えた。癌がなくなったら精神病が増えるだろうと予想してましたが、どうでしょう?

整体ではなるべく「天然の体」「野蛮な体」を目指していますが、公衆衛生の大義名分のもと、あまりに管理・強要されるとなかなかそうも行きません。

くしゃみをもできない、咳をしたら白い目で見られる、鼻水も安心して出せないような社会では、風邪も満足に引けません。風邪を引いたら緩めるのが肝心なのに、肩身の狭い思いをさせられては、ゆるむものも緩みません。

風邪を歪みの調整と考えるなら、風邪を引かなければ歪みは大きくなります。

社会は人間の集まりですから、風邪を抑える人が増えて歪んだままこわばったり、鈍い人が増えれば社会自体もそのようになっていくと思います。お年寄りが多少鈍いのは仕方がないとして、風邪をしっかり経過して強く育つべき子供まで満足に風邪を引かせてもらえず、とばっちりを受けるのはその後の成長を考えると気の毒なことです。

風邪くらい好きに引かしてくれ!

みんなが敏感な体を保って、さっと風邪を引ける社会が健全だと思いますが、どうも逆の流れなので、風邪の効用を周知したい。

風邪の種類

整体で言うところの風邪の原因(ウイルスというトリガーではなく、体側の条件)は色々ありますが、ここでは代表的なものを。

冷え(汗の内向)の風邪

風邪は冷え(汗の内向)によるものが多いです。

出た汗を引っ込める、例えば汗をかいたまま扇風機やクーラーの風に直接当たって汗が引っ込むと皮膚が鈍り筋が硬くなります。腎臓・泌尿器に負担がかかるので体がねじれて色々な変動が起こります。

下痢、風邪、喉の痛み、神経痛、筋肉痛、胃酸過多、脚がだるい、眼が痛む、などの中には単に冷えた場合に起こることも多いそうです。

体力が充実した人は大丈夫ですが、幼児や高齢者、疲れている時などは汗を冷やさないよう拭いておく注意が必要です。

冷えた時は足の甲の3指と4指の間が縮まって押すと痛いので、よく愉気をしてから足湯か脚湯をして汗が出ると、内向した汗の調整になります。

この風邪は汗のかきやすい時期、春から秋にかけて多くなります。

乾きの風邪

冷えと並んで乾きによる風邪も多いです。こちらは空気が乾燥してくる秋から冬にかけてが多い。

体が乾いてくるとまずはじめに口の周りの乾燥に気付きます。

唇が乾いたり、唇の周りが粉を吹いてくると「あ、乾燥だ」と分かるのでその時点で水分を取るようにすると無駄な風邪はひきません。

11月、12月は温かい汁物(スープや味噌汁、鍋物など)で、1月から3月は冷たいお水が体に吸収されやすいようです。

私はこれをやるようになってから、一年中ローションやクリームなど何も塗らなくてもほとんど肌が乾燥しなくなりました。(昔はかなりの乾燥肌でした)

体が乾くと、乾いた空気の通り路である鼻粘膜の分泌が増え、鼻水が出てきます。

乾燥に気付かず飲まないと、唇の乾きから始まって、水が足りないので濃い頻尿になる、痰の粘度が強くなって、むせたり、吐いたり、咳き込む。ひどくなると乾燥によって体がむくむ場合も。(体が水分を惜しむようになるらしい)

単に水分をとればいいので簡単。 鼻風邪を引く方は水が足りていないかも?

晴哉さんは、本人がひどい目に遭ってる時に勧めた方が自発的に続けるから良いと言ってます。

夏の水分補給はよく言われますが、冬の乾きはなかなか気付きません。体に潤いをもたらすのは、むしろ冬の水分補給です。

共通現象

風邪の経過はそれぞれですが、他の人の風邪には詳しくないので本を読んでください。

共通現象として熱やくしゃみ、寒気、頭痛などが起こりますが、これらは首のこわばりによるものだそうです。鎖骨の上の窪みに愉気すると回復します。

風邪が重症化して肺炎になるのはここが硬くなっている人たちで、左右どちらか硬くなってる方に愉気するといいそうですよ。

鎖骨窩を押さえると治るスペイン風邪というやつがあった。驚くほど簡単に治るのです。(中略)鎖骨の凹みのどちらか硬いほうをじっと押さえているとなくなっちゃうんです。脈がドッドっと打ったらちょっと弛め、キンとなったらちょっと押える。脈に応じて押えているんです。五分もたてば普通になります。硬いのは弛みます。弛めばいいんです。

月刊全生 2020年5月号 野口晴哉談

難しいこと書いてありますが、 鎖骨窩はデリケートな部分なのであまりぎゅうぎゅう触るのはよくないです。愉気ができない人は硬い方を蒸しタオルで温めるのが簡単です。

風邪を引いたらお試しください

コロナの予防、対策はこちらにも載せておきました。

上手な風邪の引き方

風邪を上手に経過するには、いくつかコツがあります。

これも常識とは全く違いますが、私自身は10年くらい、整体の歴史としては100年くらいあって、体を丁寧に観察している人たちが実際にやってみて、納得できるものだから残っているのだと思います。

それでも人の体はそれぞれ違うから、一律のやり方というよりは、「自分にうこと」を重視し、それが分かる感覚を育てることを大切にしています。

逆に常識的に行われている風邪の「治療」がどういう根拠で行われているのか私にはよく分かりません。熱が出たから氷枕?熱いから冷やすというなんとも短絡的な考え方ですが、それで実際どこがどう良くなったかだれか検証したのでしょうか?

症状をその場で止めるのが治療だとすると、あまりにお粗末と言わざるを得ない。

整体では、体の弾力やこわばり、歪み、手や気で感じる違和感など体全体を観察して、弾力が戻った、バランスがとれたことを確かめて、正しかったかどうかを判断します。たとえその時症状が止まっても、体を鈍らせるもの、こわばらせるもの、歪ませるものであれば間違っていた、と考えます。

さらに本当はその後1年、10年、もっと言うと一生、次の代、正式には3代目までみて初めてその「治療」が正しかったかどうかが分かるのではないでしょうか。(体が本当に変わるのは3代かかると言われています)

経過を全うする

風邪で一番大切なことは、経過を全うするということです。

風邪を完全に経過しないで治してしまうことばかり考えるから、ふだんの体の弱い処をそのまま残して、また風邪を引く。風邪を引く原因である偏り疲労、もっと元をいえば体の偏り運動修正を正すことをしないで、いつでもある処にばかり負担をかけているから、体は風邪を繰り返す必要が出てくる。

人間が風邪を引くというはたらきをもっていながら、なぜ体が硬張っていくのかというと、風邪を治したり、風邪を予防したり、風邪に鈍くなるようなことを講じているからです。

風邪の効用

これは実体験から切実に感じます

背骨で呼吸する(行気)

整体では背骨に息が通ることを大切にしています。

「背骨に息を吸い込んでいくとだんだん背骨が伸びて反ってくる、反りきると背骨に少し汗が出てくる。」晴哉先生の風邪の処理方法はこれだけだそうですが、背骨に気を通すと、通りの悪いところがあって、そこが偏り疲労の個処かしょだから、通れば風邪は抜けるということです。

どうしても通りが悪い処は、人に愉気をしてもらうのが気持ちいい。

疲労個処はだいたい決まっていて、生活習慣や体癖的な偏りからきているよ

風邪を引いたら、心や体の使い方、生活を反省して改める機会にしよう

活元運動

自分で気を通すことを「行気」と呼んでいますが、私は行気だけでは難しくて、活元運動をすると自然と背骨に息が吸えるようになります。

活元運動は偏り疲労の調整になりますから、風邪を引いた時の対処法というより、風邪を引く必要がなくなると言えます。

私の場合、ひどい風邪になってしまった時はあまり活元運動は出ませんが、ちょっとした不調の時にやるとそれだけで不調が抜けることが多いです。そのままにしておくと風邪になるのだろうと思います。

だから普段から活元運動をやっていると、偏り疲労が蓄積せず、無駄に風邪を引くことが少なくなります。

冷やさない

「冷え」が風邪の原因になることは前述しましたが、風邪を引いたら冷やさないことは基本です。

冷やさないというのは、寒くしないということもそうですが、「汗の処理」という意味です。

汗をかいたらしっかり拭いて、かいた汗を冷やさなことが大切になります。

また良くないのは熱がある時に冷やすことで、氷枕や額、首を冷やすと、体は熱を出したいのに抑えられるので経過を乱します。

冷やすと皮膚が縮み発汗が止まります。発汗は熱を下げる作用がありますから、冷やせば熱が体にこもることになります。きちんと汗をかいて体温調節できることが大切です。熱中症対策で冷やすのもどうでしょう?冷やしていないと暑い体より、汗をかいて冷やせる体の方が便利ですよね。

特に風邪の時は汗が出てゆるむことによって、風邪が抜けますから冷やせば経過が長引きます。

整体では「冷やす」という処置を行うのは、熱中症になった時に頭のてっぺんを小さく畳んだ濡れタオルで冷やす、という場合のみです。

あとは基本的に温めます。痛みがあったり炎症を起こしているときは冷やすことが常識かと思いますが、「冷やす」というのは鈍らせることになります。症状を止めることを目的としている場合はいいかもしれませんが、治癒を目的とする場合はどうでしょう?

火傷も冷水で冷やすよりお湯で温めた方が私は治りがいいですよ。痛みが少なくなる温度があります。ひどい時は怖いと思うので、ちょっとした火傷の時に試しておくといいかも?

最近めっきり怪我もしませんが、腫れて熱をもっているような場合にも冷やして抑える、鈍らせるより、温める。本当は愉気が一番です。しょっちゅう怪我をしていた子供の時に知っていれば良かったな、とつくづく思います。

考え方としては、「抑える」方向ではなく、「活発にする」方向に誘導する、体がやってることを助けると自然と治まるということです。

風邪から話がそれましたが、風邪の時には特に冷やさない、温めるが基本です。

温める

温め方としては、体の鈍ったところが温まりにくいので、その部分を温めるということです。

これは体のゆるみとひきしまりという熱に対する体の反応を利用するのであって、生きた人間はモノではありませんから、物を温めたら温かくなった、という単純な物理法則の応用ではありません。

詳しくはこちらをご参照ください。わりとこれだけで不調が解消されることも多いです。

水を飲む

前述しましたが、水を飲むのは大切なことです。特に風邪の時に水を飲むと体によく吸収して経過がスムーズになります。

平温以下の時期の安静

風邪を引いて熱が出た後、平熱以下に下がる時期があるのを知ってますか?

体温を測ってみれば分かることですが、平熱が36.5℃だとすると、35℃台になったり、普段より体温が低い時間があって、それから平熱に戻ります。

普通の風邪なら8時間、子供なら6時間、重い病気の場合は数日かかることもありますが、普通の風邪なら数時間です。

整体ではその平温以下の時期を急処として、安静にして寝ています

熱が出たり、症状が出ているうちは普通に動いたり、お風呂に入った方が経過が早いのですが、この平熱以下の時期に「よし、熱が下がった。もう大丈夫」と勘違いして外に出たり働いたりすると余病を起こしたりして、せっかく風邪を引いても体が整わないばかりか、壊してしまう結果になるそうなので、注意しましょう。

急性期は体のあちこちが活発に働いていて、平熱以下になった時は体がゆるむ、つまり休息を欲しています。

子供などは熱がある時に寝かせておくと、この時期に起きて遊びたがりますが、熱がある時は大人が騒がなければ案外普通にしているので、好きにさせておいて、平熱以下になったらしっかり寝かせておくことが、風邪の経過で一番重要なことです。

冷やさないように温かくして(特に風に当たらないこと!)、汗をかいたら拭くようにします。

この時の汗は、最初ベタベタしていますが、緩み切る時にサラッとした汗に変わります。

ベタベタしてるときは着替えず、サラッとした汗になってからにします。

汗の質は、風邪の時に限らず観察すると面白いです。

例えば梅雨時期など、夏の体になる前はベタベタの汗(塩分が多い)をかきますが、しっかり夏の体になれると汗がサラサラ(塩分は少なくほとんど水分)になります。私の場合、今年の夏、他はサラサラな汗なのに、首だけベタベタな汗で汗疹あせもみたいになりましたが、首に蒸しタオルを何日かやったら首もサラサラな汗をかけるようになりました。皮膚がゆるんで発汗しやすく、体温を発散できるとサラサラな汗になるようです。どんどんサラサラな汗を出して体温を逃せるのが夏の体。首だけ鈍くて夏の皮膚になれてなかったんですね。こういうのが偏り疲労です。冬は皮膚が縮んで発汗が少なくなり、骨格も縮みます。夏には骨格も皮膚も拡がって熱を発散し、冬に縮んで逃さないよう体は季節によって伸縮しているのです。

夏に合わせた腕時計が冬には手首が細くなるので、ゆるゆるになりませんか?

季節の変わり目に風邪を引くのは、どこかがつかえてこの伸び縮みがスムーズに行かない場合です。風邪によって季節に対応した体に移行しているとも言えます。だから季節の変わり目の風邪は敏感な人ほど早く引くそうです。上手に風邪を引けなくなると花粉症や鼻炎が長引いたり。

子供の頃は季節の変わり目のアレルギー性鼻炎がひどかったですが、今はまったくなりません。花粉やアレルギー源はトリガーにはなりますが、体の条件が揃わなければなれないのでは?

平温以下の時期は普段ゆるめなかったところも、サラサラな汗がかけるようになって全身がゆるめば風邪が抜けるということなのでしょう。

平温以下から平温に戻ればもう普通にしても大丈夫です。

その後また熱が上がったり下がったりすることもありますが、とにかく最初の平熱以下の時期が急処で、しっかり休んでやり損なわないのが大事です。

この時期にきちんと仕事や学校を休めるといいですね。夜中に経過してしまうことも多いですが。

愉気

愉気がよく効くのは、この平温以下の時期です。

風邪の効用として、上手に風邪を引くと古い病気が自然と治るそうです。

私はそこまで実感したことはないですが、晴哉先生は喘息やリウマチもこの時期を狙って治していたとか。

また風邪を引く前に恥骨の圧定愉気をすると皮膚異常が治るそうです。 シミやアザ、水虫まで治ることがあるそうで、ご興味のある方はトライしてみてください。

早く風邪引きたくなってきませんか?

平温以下の時期の基本は胸椎5番の愉気です。胸椎5番は肩甲骨のちょうど真ん中くらいの骨で、風邪の時は飛び出してることが多いですが、それがスッと引っ込むまで愉気します。

分からなければ肩甲骨の間に掌を当てて、深い息が入り自然と手が離れるまで。

家族にやってもらうのが一番ですが、難しい場合は蒸しタオルでも代用できるかもしれません。

胸椎5番の他、捻れてる骨に愉気する、と言いますが分からない場合は、普通に愉気法で手が止まる処がなくなるまでやればいいと思います。

愉気は何でもない時はあまり効かないというか、鈍い人は感じにくいかもしれませんが、この時期は体が愉気を欲しているので、特に気持ちがいいと思います。

その他の注意点

その他いろいろと書いてありますが、現代で気を付けたほうがいいのは、風邪を引いたらなるべく目を休めるということでしょうか。

特に寝ながらスマホなどをすると、咳が残ります。仕事は仕方がないとして、使ったら蒸しタオルで緩める他、平温以下の安静時は目を絶対に使わないことをおすすめします。

食べ物は急性期はあまり気にしなくてもいいけど、刺激物をいっぱい食べるといいと書いてありました。普段食べすぎている人は、食べ物を少なくするのも内蔵を休めるいい機会です。

平温以下の時期はできれば何も食べずに水だけ飲みます

よく急性期に心配して優しくなり、熱が下がったら「もう大丈夫」と冷たくなる人がいますが、それは逆で、平温以下の時期だけ優しくするようにしましょう。急性期に無駄に親切にしたり特別扱いすると、風邪に味をしめて、病人になりたい欲求を育てます。また治りそうになると未練症状を起こして治りが遅くなることも。

風邪をひいたら「おめでとう」と言うのが整体流の潜在意識教育だよ

引きたいと思ってると全然引けないんですよねー

あとはやはり緩めることが大事です。 「たかが風邪!」と強がってみたり、「風邪を治そう!」「闘病!」と気張っているとスムーズに経過しないことが多いです。淡々と風邪の経過を観察して「あー今はここを治してるのかー」とか「ここがつかえてたのかー」とみてると面白いと思います。

闘って病を征服するのではない。ゆるめ拡げ、またひきしめ縮め、体の動きの流れるように整える。早く恢復かいふくすることがよいのではない。自然に流れ、体のもっている力をスムーズに発揮すればそれがよいのである。

余分な養生が人を弱くし、余分な治療の工夫が恢復かいふくのはたらきを鈍くしてしまっていることは少なくない。

子供の風邪

子供の風邪はとても大切です。

子供は風邪の経過を全うするたびに弱い部分が強くなり、丈夫になると言われています。

免疫がつくとも言いますよね?

風邪が治ると一回り成長した感じがしませんか?

自分の力で病気を経過することによって、体に対する信頼や自信、自立心が育つと思います。

残酷なのは、病気や風邪に対する恐怖心を植え付けて、「〇〇がなければ」「〇〇しなければ」健康になれないと教え込むのは、その後の人生の不自由を育てると思います。

なにが「かわいそう」なのかよく考える必要があります。

自分の不安を子供に押し付けていませんか?親が認めた方向に子供は伸びると言われています。

麻疹は呼吸器、水疱瘡は泌尿器、おたふく風邪は生殖器の発育を促すと言われていたのに、風邪まで引かせないで育った子供はどうなるんだろう。。

ちなみにこちらの記事では整体流で子育てする場合とよく似た受難がよく描かれています。。

反ワクチンは受難の道(ナカムラクリニック)

記事中の論文『ワクチンと各種疾患の発症率、病院受診回数の関係について』ではワクチン摂取群では明らかに疾患の発症率が高い結果が表されています(邦訳のグラフはこちら)。通常考えられている通りワクチン自体の害なのか、整体でいう無病の害なのかは分かりませんが、整体の経験則が10年に及ぶ調査によって科学的に示されています。ただし残念ながらこの論文を発表した小児科医のポール・トーマス氏は医師免許停止処分となったそうです。このような状況の中で、子供の健全な発育のために子育てをするのはそれこそ受難の道を覚悟する必要がありそうですね。。勇気と良心を持った医師による真っ当な研究が増え、「無病」を目指す現行の医療から、本来の人間の「健康」を取り戻し、体を育てるという意味での「体育」が普及することを望みます。

名著『風邪の効用』

これまで自分では「風邪の効用」を実感しながらも、人にはあまり勧めてきませんでした。

常識と違うことを言っても面倒ですからね。

ただ今のコロナ騒動を見ると、1962年に出版されたこの本の内容がもっと伝わっていれば、こうはならなかっただろうに、と悔やまれます。

名著『風邪の効用』。

多くの方にお読みいただければ幸いです。

健康情報としても読めるけど、実は「どう生きたいか」考えさせられる哲学の本かも?この辺が名著と呼ばれる所以で。

科学的な情報を参考にしながらも、生命の自律性や自分の感覚に信を置きたいと思います。そのためにも心と体を整えよう。

風邪は誰も引くし、またいつもある。夏でも、冬でも、秋でも、春でも、どこかで誰かが引いている。他の病気のように季節があったり稀にしかないのと違って年中ある。しかし稀に風邪を引かない人もいる。本当に丈夫でその生活が体に適っているか、そうでなければ適応感受性が鈍っているかであって、後者の場合、癌とか脳溢血とか、また心臓障害等になる傾向の人に多い。無病だと威張っていたらポックリ重い病気にやられてしまったという人が風邪に鈍い。最近、風邪の細菌が癌の治療を行なうとか、結核と癌は両立しないとかいう説が現われだしているが、もっともなことと思う。

体量配分を測定していると、配分比に乱れが多くなると風邪を引く人が多く、風邪を経過してしまうと、体量配分比は風邪を引く前よりバランスがとれるということが判る。風邪は自然の整体法なのではないかと、測定に当たった人達は考えるようになったが、風邪が偏り運動修正や潜在的偏り疲労の調整を行なっていることは事実である。

しかし風邪の治療に工夫し過ぎた人は、風邪を経過しても体量配分比の乱れは正されず、いよいよひどい偏りを示すこともある。風邪の後、体の重い人達がそれで、他の人は蛇が皮をぬいだようにサッパリし、新鮮な顔つきになる。風邪は万病のもとという言葉に脅かされて自然に経過することを忘れ、治さねば治らぬもののように思い込んで、風邪を引くような体の偏りを正すのだということを無視してしまうことはよくない。体を正し、生活を改め、経過を待つべきである。このようにすれば、風邪が体の掃除になり、安全弁としてのはたらきをもっていることが判るだろう。吾々は体癖修正のために進んでその活用を企画している。

昭和三十七年十二月

風邪の効用 野口晴哉

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